彼はもともと国連で働いていて、その後、ハーバード・ケネディースクールに行き、VAXESSという会社を起業。シルクを使って冷蔵庫に入れなくても変質しない(冷蔵庫や電気のないところに届けることのできる)ワクチンの開発を行っている。
以前、彼の会社を数億円で買収したいという話があったらしいのだけれど、「それでは安すぎるので断ったんだ」という話をパーティーのときにニコニコしながら教えてくれた。
もっと詳しい話や彼の思いを聞きたくて、彼の働くシェアLabを訪問。
蚕そのものや液体になった蚕、そして様々な温度に設定してある冷蔵庫など、彼の実験室を見せてもらった後、(Labの一角とは思えないようなおしゃれな)リビングでコーヒーを飲みながら彼の起業話を聞かせてもらった。
国連で働いていたときに蚕農家(@カンボジア)を支援していたけれど、プロジェクトの期間が終わったら蚕農家に対する協力も終わりになった。
そんな中、彼らの生産している蚕を何かに使えないか…と考えていたときに、ひとつのTED
TALKに出会った。それは、シルクの可能性について語ったもので、そのTED TALKを見たときに、「これだ!」と思い、すぐにそのプレゼンを行った人(ボストンで研究を行う教授)にコンタクトをとった―これがすべての始まり。
その後、たまたまLivioはハーバード・ケネディースクールに行くことになり、ボストンが拠点になったため、シルクの可能性を実用化する事業に関わることになる。
ベンチャーキャピタルや行政からお金をとってきて、冷蔵庫の必要ないワクチンの開発を数年かけて10人のチームで実施中。
彼がハーバードの学生だったときに、学生の中に、アフリカの国で以前保健大臣の職に就いていた人がいたので、彼は何度も彼女のところに足を運んだらしい(嫌がられるぐらい笑)。
そのときに聞いた話が彼の事業のヒントにもなっているとのこと。(例えば、冷蔵庫の容量には限りがあるため、国際社会から届くワクチンの何割かは現場では廃棄されていたこと等。)
また、蚕を医療からファッション・アートにまで使うべく、様々な企業・組織と彼らは協同しているということで、なんと枠にはまらない事業なのだろう…と驚くばかり。
もちろん、ワクチンとして使えるようになるまでまだ数年はかかる見込みで、また、企業をゼロから立ち上げて事業を行うことは多忙を極めるし神経を使う作業でもある。そのため、「時には大企業で働いて、次に何をすればいいか指示してもらえるような生活がいいなと思うこともあるよ。壮大な夢を描いて、それが花開かないで終わる可能性だってあるんだから。でもハーバードで、一度しかない人生、ワイルドに生きろと教わったしね」と茶目っ気たっぷりに話すLivio。
彼はForbes under 30にも選ばれている今注目の若手起業家。冷蔵保存のいらないワクチンが開発できたら、いったいいくつの命を救うことができるだろう…世紀の大発明につながるかもしれない事業を20代の彼が仕切る…
こんな人にパーティーでひょこっと出会ってしまうなんて、やっぱりボストンって面白い若者たちがたくさん集まっている場所だ。ぜひぜひVAXESSの事業、うまくいってほしい。
そして、こういうイニシアチブをどんどん応援する文化・制度・環境があるアメリカ/マサチューセッツ/ボストンはとても魅力的だと改めて思った。
そして、こういうイニシアチブをどんどん応援する文化・制度・環境があるアメリカ/マサチューセッツ/ボストンはとても魅力的だと改めて思った。