2010年2月27日土曜日

選挙キャンペーン

4月の総選挙に向けて、ジュバでもようやく選挙キャンペーンが活発化してきました。


街中の木や壁、そして、車体にまでポスターが貼られており、また、選挙キャンペンカーも走っています。


日本の選挙キャンペーンと異なり、南部スーダンでは歌やダンス、仮装も選挙キャンペーンの一環のようで、なんだかお祭り騒ぎです。

南部スーダンの現職大統領の選挙キャンペーンの日には、省庁もあまり機能しておらず、お店も半分はお休みでした(かなり現職に有利な状況ですよね…)

これからこのお祭り騒ぎが4月の9日まで続き、411日から3日間かけて選挙が実施されます。


日本でも(都議会議員や区議会議員などの選挙の場合には)「誰に投票すべきか…」と悩んでしまうときがありますが、今回のスーダンの選挙では、南部スーダンの人々は12種類の投票を実施することを求められています…

1.スーダン大統領

2.南部スーダン大統領

3.州知事

4.国会議員(選挙区枠)

5.国会議員(政党枠)

6.国会議員(女性枠)

7.南部スーダン議会議員(選挙区枠)

8.南部スーダン議会議員(政党枠)

9.南部スーダン議会議員(女性枠)

10. 州議会議員(選挙区枠)

11. 州議会議員(政党枠)

12. 州議会議員(女性枠)


データによっては、80%の男性、そして90%の女性が読み書きができないと言われている南部スーダンで、これだけの規模の選挙を実施するためには相当の啓発活動が必要です。そのため、各州ではNGOによる住民に対する啓発活動が続けられています。


南部スーダンは、来年1月の住民投票(南部スーダンの独立を決める選挙)にまで辿り着くために、何としても今回の総選挙を無事に終わらせたいという意向があるようですので、今のところ選挙に関わるような事件は発生していません。


ダルフールの和平合意に絡んで、選挙延期の可能性についても一部報道がありましたが、今のところ予定通り選挙は行われるようです。


未だに部族間紛争が散発しているスーダンで、民主主義の壮大な実験がどこまで機能するのか…国際社会はその動向を見守っています。



女性に投票を促すポスター&「平和のための投票を!」と呼びかけるポスター
◎ホテルの壁に貼ってある選挙ポスター

2010年2月20日土曜日

ジュバからは見えない風景

南部スーダンの援助業界で今年話題のペーパー’Rescuing the Peace in Southern Sudan’


OxfamSave the Childrenなどの10の国際NGOが連名で作成したものですが、我々ジュバベースの援助機関には把握することができない南部スーダンの地方の生の声、また、国連を含む国際社会への厳しい批判を含む内容となっています。


・南部スーダン政府による武装解除の実施、そして、UNMIS(国連スーダンミッション)による国連平和維持軍の派遣にも関わらず、2009年には南部スーダンでは2,500人の人々が殺され(その犠牲者のほとんどは女性と子供)、35万人の人々が家を追われた。

・南部スーダン全域において舗装された道路は合計で50km以下しかなく、そのほとんどがジュバに集中していることから、雨期には南部スーダンの地方には食糧を含む援助ができない状況が生じている。

・フランスのサイズの国土を持つ南部スーダンでは、未だに50%以上の人々が安全な水へのアクセスを持たず、他のどの国よりも妊婦の死亡率が高く、7人中1人の割合で子供は5歳になる前に死亡し、90%に近い人口が読み書きができない状況…

Multi Donor Trust Fund(MDTF)に代表される南部スーダンの援助の枠組みは、プロジェクトに資金が出されるまでに多くの時間がかかることから、現地の差し迫った開発ニーズに応えることができていない(2005年から始まったMDTFに拠出された524億円のうち、実際に使われたお金は1/3程度)。また、南部スーダンの未来が不透明な中で、ドナーは長期的な資金を出そうとしないことから、南部スーダン政府やNGOは長期的な開発計画を立てることができない。

・政府をつくるという経験が皆無に近い南部スーダン政府に対して、必要な技術支援が十分になされていない(同じように紛争後の国づくりに直面した1990年のモザンビークでは、3,000人に近いTechnical Assistance (TA)が省庁に配置されていたが、南部スーダンでは150人程度)

・現在の南部スーダンでは、民間人の保護、人道援助(緊急援助)への対応と備え、そして、南部スーダン政府への技術支援を含む開発援助の実施促進が何よりも重要。


それにしても、名立たる国際NGOAdvocacy力には驚かされます。

国際機関やドナー国から委託される業務をただ単に実施するということだけに留まらず、現地の人々の声を(途上国政府を通さずに)直接国際社会に発信するという役割を積極的に担おうとする国際NGO

このペーパーによって、UNMISは国際NGOと協議する場を持つことにしたとか…


「南北の和平合意が成立してから5年が経過し、レファレンダム(南部の独立を問う住民投票)まで1年を切った今、これからの12か月をどう乗り切るかによって、スーダンの未来が大きく変わるだろう…」


ドナーを含む国際社会は、このペーパーのメッセージを真剣に受け止めなければなりません。

2010年2月13日土曜日

One day trip

ジュバから南方へ車で2時間程度行ったところにあるガンジというCommunityを訪問しました。


南部スーダンには議会直属のファンドがあり、1議員3,000万円を上限にそれぞれの選挙区に資金を流すことができる仕組みがあります。

インフラ整備、農業などそれぞれの選挙区の優先順位に沿う形でお金が使われます。

ガンジではそのファンドのお金を使って、警察署とゲストハウスが建設され、この日はその開所式のために300人近い人が集まりました。

南部スーダンでは今日から選挙キャンペーンが解禁されましたので、まさにその日にあわせた開所式。


ただし、新しくできた警察署やゲストハウスはよくよく見てみると家具は一切ない状態…

コミュニティはこれから自ら資金を調達して家具をそろえなければなりません…そう考えるとまだまだ先は長そうです…


開所式では、新しく建てられた警察署とゲストハウスへのお礼の言葉はそこそこに、後は、陳情のオンパレードです。

学校、保健所、水場、雇用がほしい…

セレモニー自体は3時間近く遅れて開始されたのですが、陳情のスピーチは夜まで続きそうな勢いでした。


ガンジまでの道のりは、まだ地雷が埋まっている場所が多々あるようで、道沿いには「道それるな、地雷あり」という看板をたくさん見かけました。

また、へんてこな形の地雷除去車を何台も見て、地雷の危険性が身近にあるのだということを改めて認識しました。


さて、ガンジの就学率は約50%。これを多いとみるか、少ないとみるか…

ゲストハウスよりも学校を!と私も思わず陳情をしたくなってしましました…


◎ゲストにWelcome Songを歌う女性たち

◎開所式の様子◎新しく建設された警察署

2010年2月11日木曜日

BRAC

ジュバでは、様々なところでBRACの看板を見かけます。


バングラデシュの独立(1971年)以来、バングラデシュの農村の女性、子ども、そして、貧しい人たちを対象にマイクロファイナンスや教育、保健サービスの提供を行ってきた国際NGOBRAC

BRACとはもともとは、Bangladesh Rural Advancement Committee(バングラデシュ農村開発員会)の略称だったのですが、BRAC2002年からバングラデシュの国外へも活動範囲を広げていったことから、今はBRACとだけ名乗っているようです。)


バングラデシュで貧しい人々や弱い立場の人々にサービスを提供してきた経験がきっと海外でも役に立つのではないか…という思いのもとに、その活動範囲をアフガニスタン、スリランカ、南部スーダンと広げてきたBRAC


南部スーダンでは、全10州のうち7州でマイクロファイナンスを展開し、また、コミュニティの女性をトレーニングすることによってCommunity Health WorkerCommunity Teacherを育て、行政サービスの行き届かないコミュニティに保健や教育のサービスを提供しています。

これまで南部スーダンで貸し付けたローンは約5.7億円。

年平均2-3万円を一人の女性に貸し付けているということなので、単純に計算してもどれだけ多くの南部スーダンの女性がBRACを通じて恩恵を受けているかがわかります。

また、BRACは国連機関からファンドを受託し、南部スーダン全土のローカルNGOのトレーニングも実施しています。


途上国発の国際NGOがここまで大規模に、そして、現地に根差した形で活動を実施しているのを目の当たりにすると、日本の支援の強みとは何か…ということを考えさせられます。

そして、このように多くのサービスを提供する総合商社のような国際NGOが日本で誕生しないのはなぜか…という疑問が浮かびます。

現在BRACはアフリカでは5カ国で活動を展開していますが、今後はアフリカ3カ国を新しく活動地域として追加し、また、ハイチでも活動を開始する予定のようです。


以前日本でBRACの創設者であるAbed氏の講演を聞きに行ったときに、「どうして現地にネットワークがないアフリカでこれだけ活動を展開することが可能なのですか」と伺ったところ、Abed氏はPartnershipCommunicationが一番大切だということを話していましたが、南部スーダンの現地スタッフに同じ質問をしたところ、Abed氏と同じ回答がかえってきました。

BRAC Spiritsがトップから現場まで浸透している…これがBRACの成功の秘訣なのかもしれません。


“If I were thirty-five now instead of sixty-eight, I would do so many other things that I haven’t done...Now at the twilight of my life, I feel that I must complete all the things that I have started.”(訳:もし私が今68歳ではなく35歳だったら、まだ手をつけていない多くのことに手をつけるだろう。しかし、人生には限りがあるため、私は新しいことを始めるよりも、自らはじめたことのすべてを成し遂げなければならないのだ。)

Fazle Hasan AbedBRAC創設者) より

2010年2月7日日曜日

Do what you can with what you have, where you are.

ロシナンテス(スーダンで医療活動を行う日本のNGO)は医療活動だけでなく、サッカーを通じた青少年の育成事業もやっています。


そのコーチを務めていた方(Mさん)が、奥様の異動の関係でスーダンを去られるということで、送別会に参加しました。


「川原さん、サッカーで何かできませんかね?」から始まったロシナンテスのサッカー事業。

女子のスーダン・ナショナルチームの育成や少年サッカー教室を通じて、サッカーの技術だけでなく、チームワークの大切さや礼儀、がんばることの意義を伝え、スーダンの次世代育成に貢献されました。


「僕にはサッカーしかありません…」と涙ながらにMさんは語っていましたが、私からは、サッカーを軸に国際協力に邁進するMさんの姿はとても素敵に見えました。


国連で働く奥様のお仕事の関係でスーダンにいらっしゃったMさん。奥様のスーダン赴任を通じて得られたスーダンでの一期一会から育った芽を大事に大事に育てて大きく花を咲かせ、サッカーを通じて多くのスーダン人や日本人の心を動かしたMさん。


「どこにいくか」「どの組織に属するか」ではなく、今自分のいる場所でそこでの出会いを大切にしながら生きることの素晴らしさをMさんの姿からは感じました。


次の奥様の赴任地はインドということで、ぜひ「クリケットの国インド」でもサッカーを通じた国際協力に邁進してください!


◎コーチの指導姿

2010年2月5日金曜日

Children in the street

ジュバのある中学校では40人以上のストリートチルドレンが生活しています。

その大半は、男の子…


彼らをサポートしている中学校の先生に話を聞いたところ、男の子の家族はその男の子が結婚するときには、ダウリ(日本でいうところの結納金)を支払わなければならず、経済的には大きな負担となることから、貧しい村では男の子が見捨てられてしまうという現状があるということ。


女の子であれば、結婚するときには家族はダウリ(結納金)を受け取れることから、女の子の方を大事に育てるインセンティブが家族には働くようです。


標準的な家のダウリであれば、牛10頭(またはそれに相当する現金)程度。また、その他にも弓矢やヤギなどをセットで贈るという風習が南部スーダンではあるようです。


ストリートチルドレンを支援するためには、ストリートチルドレンに対する教育や職業訓練の機会の提供だけでなく、農村の貧困という根本的な問題を解決することが必要です。そうでなければ、都市に流れ込んでくるストリートチルドレンの数を減らすことはできません。

ここでも緊急支援的アプローチと開発的アプローチの両方をうまく組み合わせて支援することが求められています。


◎ジュバの市内を移動する牛の大群~重要な財産である牛はダウリとして花嫁の家族に引き渡されます。

◎農村の子どもたち