2010年1月31日日曜日

4つのシナリオ

2009年の9月に書かれ話題になったというペーパー’Sudan 2012 Scenarios for the future’(「2012年のスーダン 未来へのシナリオ」Jair van der Lijn著)を読みました。


2012年以降のスーダンの未来には以下の4つのシナリオがあり得るということで、各シナリオが現実となった場合に、どのようなことが起こりうるかがペーパーの中で検討されています。


シナリオ1:(南北は)分離せずに戦争に突入(再び内戦が勃発)

シナリオ2:戦争が起こり、かつ分離する(境界をめぐる紛争)

シナリオ3:分離も戦争も起こらず(CAPに沿ったシナリオ)

シナリオ4:分離するものの戦争は起こらず(ソマリアの再来か)


シナリオ3が最も暴力的でなく望ましい選択肢であるものの、一方で、最も実現されなさそうなシナリオであるとも書かれています。

シナリオ3を実現させるためには、国際社会からのプレッシャー(CPAに係る新たな国際的合意文書の締結)と南部のリーダーシップの発揮(北部スーダンの野党のとりまとめ)が必要だということですが、20101月の時点では、これら2つの動きは残念ながら見えてきません。


どのシナリオが実現された場合でも、小規模な紛争は続くだろうと予想されていますが、最も暴力が少なく、また、経済的損失も少ないシナリオに落ち着くためには、何が必要となってくるのでしょうか。


ペーパーの中では、


2012年以降のことについて今の段階から検討すること

・自由で公正な選挙を実現させること

・国際社会が積極的に南北の調停に入ること 等々


が必要であると書かれています。


リファレンダム(南部の独立を問う住民投票)まであと1年をきりました。

果たして世界で一番新しい国は来年誕生するのでしょうか…


‘It is, after all, very likely that none of the scenarios described will come true, but elements of them are likely to be part of the future. (どのシナリオも完全に実現することはないでしょうが、その要素はスーダンの未来の一部になり得るのです。)’ 
Sudan 2012 Scenarios for the future』 Jair van der Lijn より

2010年1月29日金曜日

日々の業務

前回一時帰国したときに、「スーダンではどんな仕事をしているの?」と多くの人に聞かれたのですが、ここ最近の業務の大半は調達です。


新しい事業を立ち上げるときには、そのためのオフィス、家具、車両、備品等が必要になってくるので、たくさんの物品を調達しなければならないのですが、それがジュバではまた一苦労です…

そもそも信頼できる業者はどこか、そして、前払いの必要がない業者はどこか、マネージャーが英語を話せる業者はどこか…不良品を平気で売る業者がいくらでもいる世界なのでここは慎重になります。

お店に行ったら値段がきちんと書いてあって、不良品はすぐに取りかえてもらえる日本とは全く異なります。]


素敵な家具をつくるから…と紹介していただいたジュバの家具屋さんA社。

「マダム。2週間ですべて用意しておくから任せておけ!」とマネージャーの言葉。

それを信じて待っていたものの、1か月経っても家具がつくれらる気配なし…

何度も家具製作現場に行っプレッシャーをかけるものの、

現場のワーカーたちは、「そもそもどの会社のために何をつくっているかも把握してないんだ…」

うーん。


新しいオフィスが完成したため、セキュリティー強化のための南京錠を購入しにマーケットへ。

B社に行って外国製の南京錠の値段を聞くと、

180ポンド(約3,200円)。でも2つ買うなら60ポンドでいいよ。」

(なぜ2つ買うと1つの値段より随分安くなるのかは不明…)。

隣のC社に行って、同じものの値段を聞くと、「120ポンド(約800円)。」

もう少し安くなるかと聞くと、「じゃあ17.5ポンド(約700円)でいいよ」

…物の値段なんてあってないようなもの…

とほほ。


また、先日私用で、自分の部屋用に小さな電気コンロをD社より購入。

部屋に戻ってお湯を沸かしてみると、10分ぐらいたった後、「ボン!!」というすごい音…

その後コンロは使えなくなってしまいました。

D社にクレームをしにいくと、「コンロを10分以上使ったか?それはお前が悪い。このコンロは10分以上熱くなることが想定されていないんだから。」

(料理用のコンロで10分以上温めてはいけないとは一体全体どういうことなのか…)

結局私が悪いということで返品・交換はしてもらえず…

がーん。


このようなやり取りで日々は過ぎていきます。


◎家具屋A

とても素敵な家具をつくるのですが…


◎完成したプロジェクト用のオフィス

土地の確保の段階から様々な苦労をして、やっと家具を購入する段階までたどり着きました。

2010年1月21日木曜日

Teachers have many weapons?!

去年末から準備をしてきた教育関係のワークショップが今週2日間に渡って開かれました。

南部スーダン政府の教育省とうちの組織とジョイントで開催したワークショップ。

この通信事情が悪い南部スーダンで全州の代表に集まってもらうことは本当に可能なのだろうか…と心配していたのですが、様々な手段を駆使して、なんとか全州の代表に集まってもらうことができました。

教育省が2006年以降主催したワークショップの中で、全10州の代表が集まることができたワークショップは今回が初めてとのこと。

この事実からしても、州と連絡をとることがどれだけ難しいかということがわかります。

そして、中央と州がなかなかコミュニケーションがとれないことによって、州側には「中央は州の事情がわかっていない…」といったフラストレーションがたまっているのも事実です。


ワークショップの内容は、2010年に予定されているTeacher Trainingのプログラムの内容を州と共有し、各州の代表にアクションプランを作成してもらうという至ってシンプルなものだったのですが、南部スーダン人による南部スーダン人のためのワークショップとなり、南部スーダン人がオーナーシップを醸成し、今後それぞれの州でイニシアチブを発揮していくためのいい機会になったのではないかと感じています。


教育省の次官による開会のあいさつで、「教師は、多くの武器をもっています」という発言に「??」と思ったのですが、続きを聞いていると…

「我々の敵である文盲、無知、民族主義、汚職に対抗していくための武器を教師は持っています。…また、教育は我々を他の世界とつなげてくれます。子供の教育という共通の目的のために、我々のパートナーである日本人が南部スーダンにわざわざ来てくれているのです。…教師というのは子どもたち、そして国家の未来そのものです。権力、富、親族といったものは最終的には自らを守る手段になりません。でも教育は自らを守るための術を与えてくれます。だから、教師はもっと自らの任務を真剣に引き受けなくてはなりません…」

いいことを言うなぁ…と隣に座りながら聞き入ってしまいました。

そして、最後に…

「我々の国の美しいところは、国民にユーモアがあり、笑いに溢れていることです。どんなに国が発展し、科学技術が発達したとしても、これがなければつまらない国になってしまう…外国から南部スーダンに来た人たちは皆このユーモアに魅了されると言います。」


教育省次官による南部スーダンの教育関係者へのメッセージだったのですが、なんだか日本の話もされているような気がして、真剣にメモをとっている自分がいました。


さて、我々の組織が支援する教員研修も来月から開始される予定です。

一日も早く「平和の配当(Peace Dividend)」が子どもたちに届く日が来るように…現場での奮闘は続きます。

2010年1月17日日曜日

Bottom of Pyramid

スーダンへ戻る飛行機の中でたまたま読んだ日経新聞の夕刊の一面に、うちの組織がBoP (ボトム・オブ・ピラミッド)のためのビジネスを支援する制度を新設するという記事が載っていました(1企業につき最大5,000万円の資金援助を行う制度)。

BoPとは、「途上国で年間3,000ドル(約27万円)未満で暮らす層(人々)=約40億人」のことを指し、「潜在需要は5兆ドル(約450兆円)に上る」との試算があります。

この層を対象としたBoPビジネスとは、「途上国向けのビジネスと貧困削減を両立させるための取り組み」を指し、途上国の貧困削減を目指すうちの組織は、日本企業がBoPビジネスを立ち上げるための資金を提供することで、BoPビジネスの活性化を通じた貧困削減を目指します。

ロンドン在住のBoP専門家のSさんが、「(BoPビジネスとは)BOP層が自分の生活をよりよくしようとする躍動であったり、『国づくり』に足りていないものを自分たちでもビジネスを使って作り上げていくことなので、主体はBOP層の人々自身です。(南部スーダンのようなところでこそ)人々が希望を持って、収入を得て、その収入を誇らしげに貯めることができ、安心感を得て、こどものことを考えて、教育費をためたりできる世界を作るための、様々な「必要なものごと」を作っていくことが求められているのではないでしょうか?…」と以前熱く語ってくださったのを思い出しました。

BoPビジネスの芽を南部スーダンでも見つけて、育てるための支援をしていくことができないか…まずは情報収集ですね。


◎改良かまどを使ってお茶を入れる南部スーダンのおばちゃん@木の下のお茶屋さん

改良かまどを導入することで必要な薪が劇的に減り、より多くの収入を得ることができるようになったと嬉しそうに話していました。このようなかまどを農村の女性に提供するビジネスもBoPビジネスの一例ですよね。

2010年1月10日日曜日

「一隅を照らす」

パキスタン北西辺境州のペシャワールで(そしてその後はアフガニスタンで)1984年から「らい(ハンセン病)」の治療のために現地で活動される中村哲医師の本『アフガニスタンの診療所から』を読みました。

2001911日の同時多発テロ事件が起こるよりもかなり前から、パキスタン及びアフガニスタンの国境地域でらい根絶のために現地の人々と奮闘し、ソ連やアメリカ、そして古くはイギリスといった大国の代理戦争に苦しめられてきた現地の人々とその苦悩までも共有してきた中村医師。

らい患者の足を保護するための「らい用サンダル」をつくるために、現地で売っている既存のサンダルをこつこつとこわしつづけた中村医師。

日本で中村医師の活動を支えるペシャワール会の理念は「無思想・無節操・無駄」の三無主義と答えて人をケムにまく中村医師。

パキスタンのペシャワールからアフガニスタンへと活動を拡大する際に、「報いてこの世にひとつ明るいものを残せるなら、これだ。この人々と事業のためなら自分の命も軽い」と本気で思った中村医師…


パキスタンやアフガニスタンの人々と本気で向き合った一人の人間の後ろ姿を本を通して見た気がしました。

外部から突然やってきて介入し、数年で去っていく援助関係者の活動がどれだけ既存のコミュニティや文化といったものに悪い影響を与えてしまっているか…私たちが真剣に耳を傾けなければならない現地からの声です。


「『アフガニスタン―それは光と影です』というのが、私の好む一見まじめなはぐらかし文句である。現地にいて人情の機微を解する者は苦笑いしてうなずくことだろう。だが、光が強ければ影も強い。強烈な陽光と陰影のコントラストは、現地の気風である。暗さが明るさに転ずるという奇跡を私は信ずるものである。このことを一人のパシュトゥンの女から学んだ。」

「名誉、財産はもちろん、いこじな主義主張を人が持ちはじめると、それを守るためにどこか不自然ないつわりが生まれ、ろくなことはないものである。良心や徳とよばれるものでさえ、『その人の輝きではなく、もっと大きな、人間が共通に属する神聖な輝きである』というある神学者の説はうなずけるものがある。」

「我われは貧しい国へ『協力』にでかけたはずであった。しかし我われはほんとうにゆかただろうか。ほんとうに進んでいるのだろうか。本当に平和だろうか。胸を張って『こうすれば幸せになります』といえるものを持っているだろうか。」

『アフガニスタンの診療所から』中村哲 より

2010年1月8日金曜日

白い飛行機

アフリカなんて遠い存在だと思っていた学生時代の頃…

知人:「アフリカで飛んでいる飛行機には真っ白のものがあって、飛行機会社の名前とか何も書かれていないんだって。」

私:「なんで?」

知人:「いつ墜落してもいいように。真っ白だったら墜落してもどこの会社の飛行機かわからないから。」

というような会話をしたことがあります。

そして、アフリカに来た今、そのまっ白な飛行機に乗るたびに、ビクビクしています。

今日は大丈夫かな…って。

実際は、航空会社間で飛行機のリース(貸し借り)をする関係で、機体に航空会社の名前やロゴを入れていない場合や、そもそも機体に色や文字を塗るためのお金が航空会社にないため真っ白なままの場合もあるようなのですが…

今日もジュバからナイロビには真っ白な機体で飛んできました。

無事に到着してほっと一息…

明日から一週間だけ日本に帰国です。

ジュバ→ナイロビ→ドーハ→大阪→東京と4回フライトを乗り継ぎます。

やっぱりアフリカは遠いなぁ…


◎ジュバからナイロビに飛んできた真っ白な機体

2010年1月3日日曜日

スーダン観光

年末年始はスーダン国内を旅行しました。

スーダンに来て初めての観光らしい観光。

やっぱり北部スーダンではアラビア語が必須ですね…

スーダンの方やアラビア語がわかる方と一緒に観光することで、観光の幅がぐぐっと広がりました。感謝!

◎ラクダ市場@オブドゥルマン

毎週金曜日にハルツームの北にあるオブドゥルマン(サハラ砂漠の入り口)で大きなラクダ市が開催されるようなのですが、平日に訪問してみたところ、それでも20頭近いラクダがいました。

荷物も運んでくれてミルクも提供してくれるラクダは一頭約15万円。

安いのか高いのか…

ここで食べた羊のバーベキューはとびきりおいしかったです。

また、オブドゥルマンで流行のビールも飲みました。

北部スーダンではアルコールが禁止されているため、ノンアルコールビールにヨーグルトを混ぜてつくられたものです。

バケツで持ってこられたときには、飲むかどうか迷ったのですが、飲んでみるとカルピスソーダみたいで美味しくてバケツからごくごく飲んでしまいました。

◎買い物@スーク(市場)

◎ダム@白ナイル

ハルツームから車で南部に1時間程度行った場所にあるダム。

イギリス統治時代に建設されたものですが、今ではスーダン人のピクニックスポットになっています。 (白ナイルを左と右に分断している道がダムです。)

◎ピラミッド@メロエ

地方都市のシェンディまでローカルバスに揺られながら移動しました。

バスで走ること約3時間。

ロバが車と一緒に行き交う町。

ここで一泊して、次の日にメロエまで車で一時間かけて行きました。

10以上のピラミッドが一か所に所狭しといった感じで並んでいます(紀元前3世紀から紀元後4世紀ごろまでの間にエジプトから来たKushite人によって建てられたもの)。

その中に新しく(現代の人の手によって)増築されているピラミッドがいくつかあるのには驚きました…

美しい砂漠とピラミッド群。

きっとエジプトに比べると小さくて保存状態も悪いのでしょうが、このような風景がスーダンにあるんだなぁ…と感激しました。スーダンにいらっしゃる方にはお薦めです!