2010年7月25日日曜日

生活環境

地方出張で、トイレとシャワーのない部屋に泊まり、かつ、大量の虫に悩まされたら…ジュバでの生活は恵まれているとひしひしと感じました。


温かいシャワーと清潔なベットがあるだけで、生活の満足度は格段に上がります。


国際NGOで働く日本人女性には、南部スーダンの地方の郡を車で回りながら、1カ月以上もの間毎日テント&バケツ一杯の水浴びで暮らすという生活をしている方もいますが、なかなか真似をできるものではありません…


根性論はあまり好きではないものの、そういう方々の存在が一隅を照らすことによって、ここで守られている「平和」や「正義」も確実にあります。


今日も安全な場所で温かい食事とシャワーにありつけることに感謝。

そして、「相対化」や「比較」という作業はやっぱり大事だと実感しています。



◎地方の宿泊施設~国連編~(部屋の中はベッドだけ)

◎地方の宿泊施設~テント編~(テントの中にあるトイレとベッド)

2010年7月24日土曜日

内戦の傷跡

一週間地方に出張して来ました。


今回は新規案件の発掘が主な目的だったのですが、様々な施設を視察し、「戦争の傷跡」というものを痛感した出張でした。


1970年代に国際機関から数十億円単位で支援が入っていた農業関係の施設は、その後の内戦の影響で廃墟と化し、機械も使えないものに…

1970年代には数十人単位の役人が働いて、電気も通り、住居も備えた施設がありました」という説明を受けても、廃墟を目の前にしていると「想像力」にも限界があり、イメージは湧かず…


埃まみれの資料、床に散らばった家具、弾痕の残る壁…


日本であれば「博物館」に「歴史的資料」として展示されているようなものが施設のそこら中に散らばり、内戦の傷跡を生々しく物語っていました。


このように、内戦終結後5年経過しても内戦中の姿を留めた施設が数多く残っています。


そのような中で、南部スーダンのより良い未来を信じ、現地の人たちと計画と戦略を立て、それを実行に移していくという作業をどれだけスピーディかつ着実に実施できるか…


8月は正念場になりそうです。



1970年代には機能していた農民研修センター

1970年代には南部スーダンを代表する施設だった農業研究センター◎作物倉庫。壁に弾痕あり

2010年7月16日金曜日

援助依存症

オランダのNGOに勤める友人が、地方のサイト視察から戻ってきた後、ポロリと一言。

「南部スーダンの人たちは『もらうこと』に慣れすぎてしまい、今あるものでどのように生活をよくしていこうかという発想ができない…終了後のプロジェクトを視察しに行ったところ、ほとんどのプロジェクトがうまくいってなかった…それは、みんなが次の援助が来るのを待っていたから…」


国連機関で農民に種子を提供する部署で働く人と協議をしていた時、ポツリとでた言葉。

「南部スーダンの人たちは、種子を欲しがらないんだ。種子より食糧をくれって言われるんだよ…」

『魚を与えるよりも魚の釣り方を教えるのが援助の基本』というのはよく聞く話ですが、言うは易し行うは難し…


ある南部スーダンの州の大臣が私の携帯に電話をしてきて、開口一番に言ったこと。

「君たちは南部スーダンをサポートすると言っているけれど、僕には何をくれるんだ。」



…でも、一方で素晴らしい出会いもたくさんあります。



南部スーダン政府のある新任の大臣と面会していたときのこと。

「私たちは依存の構造から抜け出さなければならないのです。ドナーに『これをしろ、あれをしろ』というのではなく、私たちが自分たちでしなければならないのです。ドナーは我々をサポートしてくれているだけなのです。」


ある農業の大規模スキームで働く南部スーダン人と食事をしていたときのこと。

「私たちは人々を動機づけながら、そして、持続性を考えながら、プロジェクトを実施しなければなりません。人々は自分たちの生活を良くしていきたいという思いと行動する意志を持っています。」


そして、総務省のような役割を担う省庁の次官と協議していたときのこと。

「我々は今10のものをもらっているかもしれません。でも、数年後には3のものをもらうだけで済むように、人々の能力強化を行っていく必要があります。」



きっと世の中には「影」の部分はいくらでもありますが、「影」の部分を知りつつも、それに屈することなく、「光」の部分を目指し続けられるような心の強さと大きさと、そして、仕事の仕方を身につけられるかが結局は問われている気がしています。



◎典型的な南部スーダンの風景

2010年7月13日火曜日

電気のある生活

最近ジュバの事務所に市電(City Power)が通りました!


これまではずっと発電機で電気をまかなっていたのですが、うちの事務所もようやく市電の恩恵を受けられることに。


そういえば、スーダンに来たばかりの頃は、ハルツームの歩道に置いてある四角い箱の意味がわからず、停電の朝、思わず同僚に「今日は街中が停電だから会社もお休みですよね?」と電話したら驚かれたことがありました。


停電が起きやすいハルツームでは、各お金持ちの家庭には発電機が設置されているということに気付いたのはしばらくたった後…


ジュバではオフィスやホテルには発電機が設置されているものの、一般家庭にはまだまだ普及しておらず、市電が通っていない日の夜は街中は真っ暗です。


朝事務所に行って発電機をONにせずにすむ暮らしに感謝と小さな幸せを感じています。



◎日本製の発電機の山@ハルツーム

2010年7月12日月曜日

世界の王者

昨晩はワールド・カップの決勝戦をホテルのカフェで30人近くの人たちと観戦しました。


PK戦になるかな…と思うぐらいの接戦でしたが、最後はスペインがゴールを決めて優勝。

敗者であるオランダの選手の顔が忘れられません。

ベストを尽くした者だけが本当にくやしい思いをすることができるのだなぁと彼らの表情を見て思いました。


今回のワールドカップの日本勢の前評判はいいところが一つもありませんでした。

サッカーに詳しい人であれば詳しい人であるほど「望みはないね…」との一言。

でも実際はアフリカ人も驚くほどの活躍ぶり。

やっぱりマスコミや専門家の言うことに惑わされてはいけないなぁ、そして、代表として選んだからには最後まで選手たちを信じて見守るという姿勢が大事だなぁ…と私自身反省しました。


今回初めて日本以外の国の試合もまともに観戦しましたが、僅差で勝敗が分かれる試合が数多くありました。

でも勝ちは勝ち。そして、負けは負け…

少しの差が大きな結果の違いを生むことになる…

だからこそ日々の積み重ねが大事なんですね。


このようにサッカーからいろんなことを学んだ日々でした。

そして、サッカー観戦が好きになったのも私にとっては大きな収穫でした。


一方で、残念なニュースも今日耳にしました。

ワールド・カップの決勝戦のTV観戦中にウガンダの首都カンパラでテロがあり、60人近くの人が亡くなったとのこと。カンパラは治安がいいということで有名ですが、南部スーダンの隣の国の首都でこのような大きなテロがあるとは…まだ詳細は分からないものの、犯行はソマリアのイスラム過激派によるものではないかとのこと。


なんだか他人事ではない気がして、一気にワールド・カップのお祭りムードから覚めた私でした。



「入賞しますという人を、誰が応援しますか?」                    本田圭佑より




◎ドイツでワールド・カップを観戦したときの様子

2010年7月11日日曜日

コップの水

今日は、南部スーダンのUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)のトップのYさん(日本人女性)が南部スーダンを離任されるということで、日本人の間で送別会がありました。


2005年の南北和平合意以降、約33万人の難民が南部スーダンに帰還したと言われていますが、そのうち約半数の難民の帰還をサポートしてきたUNHCR


その組織のトップであるということはきっと人知れず様々な苦労があったことでしょうが、それを見せることもなく、いつも全力投球で働かれている姿が印象的でした。


以前Yさんが日本人会で話されていたこと。

「南部スーダンにはいろんな課題があります。でも、その課題にばかり目を向けるのではなく、2005年の和平合意以降良くなってきた部分に私は目を向けたい。コップの水が半分しかないと言うのではなく、コップの水が半分も入っている、そういうふうに考えたいのです。」


南部スーダンに長く滞在すれば滞在するほど、このようなプラス思考が難しくなってしまうのですが、私もいつもこうありたいなぁと思います。


UNHCRの支援で建設中の学校@ジュバ近郊

2010年7月7日水曜日

2011年までの宿題

来年1月には南部スーダン独立の可否を問うリファレンダム(住民投票)が実施される予定なのですが、それまでに決定されなければならないことがいくつもあります。


南部スーダンが独立した場合…

●軍隊:現在は南北スーダンの両方の軍隊から構成されるJoint Integrated Unit (JIU)の扱いをどうするか。

●石油収入の分配方法:北部の油田及び南部の油田からの収入を南北間でどう分配するか。(ちなみに、南部スーダンは独自の石油パイプラインを持ちません…)

●ナイル川の水の分配方法:北部スーダンとエジプトの間のナイル川の水に係る合意を南部スーダンは承継するのか。

●国家財産の分配方法:北部のインフラや在外公館の扱いをどうするか。

●債務の分配方法:スーダン全体の340USDの負債をどう扱うか。

●条約及び外交関係の扱い:周辺国や投資国、地域機関との関係をどうするか。

●通貨と中央銀行の扱い:南部スーダンはスーダンポンド(SDG)を使い続けるか。

●国籍の問題:南部スーダン人で北部スーダンに住む人々は市民権が剥奪されるのか。

●遊牧民の取り扱い:南北の境界を行き来する遊牧民の扱いをどうするか…   等々。


リファレンダムまであと半年を切りましたが、準備はなかなか進んでいない様子…


南北スーダンの政府には、エリート間の駆け引きにばかり労力を割くのではなく、スーダンの人々の未来を大きく左右するこれらの問題に真剣に取り組んでもらいたいものです。



◎ヌバ・レスリングを一緒に観戦する南北スーダンの人々@ハルツーム(右側:北部スーダン人、左側:南部スーダン人)