誰もが世界をよくしていくための力を秘めている。
要はその力に気づいて本気で行動するかしないか・・・それだけのことなのよ。
この本を読んでいる間中、著者が私にそっとやさしくこんなふうに語りかけてきているような気がしていました。
世界銀行(世銀)の副総裁までなられた西水さん。
開発の世界では緒方貞子さんと同じぐらい有名な日本人女性なのではないかと思います。
世銀では、途上国開発に直接携わる仕事だけでなく、世銀自体の改革も担われていたようで、その改革の事例の多様さとインパクトには驚きの連続でした。
例えば・・・
・世銀に託児所を設置する→男性職員もこぞって利用するようになる
・世銀職員に貧困を体験させる→職員の頭とハートがつながる
・世銀職員の子どもを出張に同行させる→子どもが働くママを応援するようになる
などなど。
そんなに斬新なアイデアというわけではありませんが、実際に実行に移すとなると、様々な障壁が想定されます。
例えば・・・
・託児所の設置には費用がかかる
・貧困体験や子どもの出張同行にはリスクが伴う(何かあったとき誰がどれだけ責任を負うのか?)
・貧困体験なんかしていると、ただえさえ忙しい職員がもっと忙しくなる
などなど。できない理由をあげたら、きりがなさそうです。
でも・・・そんなリスクをものともせずに、改革を次々と実行に移していった西水さん。
私は現在人事部で働いているため、世銀の組織改革のところがやはり気になって熟読したのですが、「ここまで思いきったことができるだろうか・・・」と自省の繰り返しでした。
最後の藤沢久美さんの解説もまたいい。
「こうした企業(地方の小さな企業)の経営者たちは、社員の中に役に立たない人はいないと言う。(中略)それぞれがもつ色を見つけ出すことが経営者の仕事であり、必ず光ると信じきる能力が経営者の資質だと言う。(中略)こうした経営者は言う。闘ってはいけないと。闘うことは、敗者を生むことであり、相手から何かを奪うことになる。(中略)もし、私たちが闘うことがあるとすれば、その相手は、自分の中にある安きに流れる自分の心なのだろう。(中略)私たちは、ブータンから学ばなくてはいけない。西水さんが縁を得られた多くの貧困の村に生きる人々からも学ばなくてはいけない。そして、西水さんが実現された世界銀行の改革のプロセスからも学ばなくてはならない。そこには、物質的にも経済的にも豊かになった国が、お金やモノではないものを求めることで、結果として、経済成長する社会をつくるヒントがたくさんある。そして、それを実現するのは、私たち一人ひとりの意識と行動。それは、私たち一人ひとりの中に眠るリーダーが、目を覚ますことから始まる。」
巨大官僚組織と言われる世銀で組織改革ができたのだから、他の組織でもできるはず・・・
「誰かが動かねば組織文化は変わらない。逃げるな卑怯者!」という西水さんの声が聞こえてきそうです。
人間、感動なしでは、本気で動かない。本気で動かぬ人間の組織に、ビジョンを追求し続ける変革は、在り得ない。
(悪質な縦割り業務について)心がまえの問題だから、組織改革は意識改革に準じるべきだと言う。部門を超えるチーム精神を人事の中心に置かなければできない改革。
信じられるか否かは、自分自身の姿勢で決まる。つねに自分に正直で、絶対無条件に人を信じる姿勢、すなわち「本物のリーダーたる根本条件」だ。
Think out of the box. 型にはまらず考えろ
「日本でいちばん大切にしたい会社」の経営理念も、国民総幸福量の政治哲学も、それを為して成すのは経営の品質、すなわちリーダーシップとマネジメントの品質に尽きる。会社でも国でも、一審本気でブレのないリーダーがあってこそ、幸せを可能にする成長が実現する。
組織の最高責任者として絶対に心得ておくべきことは何かと、最近世界各国でよく聞かれる。「Sensing the future―未来を感知すること。論理のみに頼らず、五感六感で未来を感じ取ることです」と答えている。
「何をすべきかではなく、すべきことをどう捉えるか。この違いが、組織を動かし、社会を変え、人の命さえをも救う」
『あなたの中のリーダーへ』 西水美恵子 より
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