高校生のときにアメリカのバージニアで捨てた青いセーターが、様々な人の手に渡って、9年後にルワンダの首都キガリの少年に着用されているのを偶然発見したとしたら…
この奇跡のような出来事に遭遇したとき、青いセーターの持ち主ジャックリンさんは、「先進国も途上国もすべて繋がっている(we are all connected)」と強く感じたと言います。
彼女の原点とも言えるような青いセーターの話で始まるこの本は、途上国で貧困解決に資するビジネスを展開する企業・NGOに資金面、技術面、マネージメント面でのサポートを提供するAcumen FundというNGOを彼女が設立し、そのNGOが成功するまでのストーリーが綴られています。
ジャックリンさんは、大手外資銀行を退職し、UNICEFのコンサルタントとしてルワンダに乗り込み、ルワンダのマイクロファイナンス機関の設立やパン屋の経営改善に取り組むことを通じて、与えるだけの援助やgood willだけに頼る援助には限界があると感じる一方で、ビジネスを通じた貧困削減の可能性に目をつけます。彼女は「将来、経験を積んでアフリカに戻ってきて、新しい雇用を生み出す工場や大規模なビジネスを始めたい」と決心して、アメリカのビジネススクールに戻り、その後、財団で経験を積み、2001年にAcumen Fundを設立します。
彼女は、Acumen Fundに投資してくれる人や団体に、「この投資からはお金を稼ぐことはできませんが、この投資によって世界を変えることができます。(You do not get any money back from your investment. You get change.)」と宣伝し、Fund設立当初に8億円もの資金を調達します。これだけでも、彼女の人脈、ビジネスプラン、そして、思いのすごさが伝わってきますよね。
Acumen Fundは、リーダーシップ、持続性、そして、社会に与えるインパクト(leadership, sustainability and scale)というクライテリアで投資先(企業・NGO)を選び、インド、パキスタン、アフリカで次々と投資先を見つけ、支援をしてきました。
我々援助機関も同じようなクライテリアで支援先を選定してはいるものの、途上国政府との関係を第一に考える点や、利益を生まない社会資本を提供するという違い、そして、新しいことにはなかなかチャレンジできない(リスクをとれない)等々の制約があることから、Acumen Fundのように支援先を厳選できないのが現状です。一方で、このようなFundとうまく補完関係を築くことができれば、我々援助機関の支援の可能性もよりバラエティが増えるかもしれないなと感じています。
ジャックリンさんは、マイクロファイナンスを通じて、女性たちがエンパワーされていく様子を目の当たりにします。
社会の末端にいる女性たちへ確実な変化を生み出すために、利益を追求するのではなく変化を生み出すための資本を世界中から集め、ビジョンとノウハウを持つ途上国の企業やNGOをサポートする…このような新しいタイプのFundが今確実に途上国の社会を変えていっています。
「これまでの全ての出会いが今の私をつくりあげています。素晴らしい出会いもそうでない出会いもすべて含めて私の一部なのです(One of my favorite lines from Tennyson’s ‘Ulysses’ is ‘‘I am a part of all that I have met.’’ And they – every one of them, good and bad – are a part of me.)」
0 件のコメント:
コメントを投稿