インビクタスという映画を見た。
1994年にネルソン・マンデラが政権を握った時…
それまで権力を握っていた白人たちは、自分たちの生活が今後どのように変わっていくのか不安を持っていた。
一方、黒人たちはやっと自分たちの時代が来たと考え、これまで自分たちを抑圧してきた白人たちや彼らの文化を表舞台から退けようとしていた。
そのような中で、マンデラは両者のかけ橋になろうと試みる。
「和解」は自分のまわりから始めるのだということで、自分の仲間を抑圧し殺したであろう前政権の白人ボディガードを継続して雇用することを決める。
また、南アフリカの中では白人からだけ愛されていたラグビーのチーム スプリングボクスを「南アフリカのチーム」として再度位置付け、白人と黒人が混在するこのチームを盛り上げていくことで、ラグビーを通じて「ひとつの南アフリカ」を愛する心が国民の間ではぐくまれるよう仕掛ける。
舞台は1995年のラグビーのワールドカップ…開催地は南アフリカ。
負けてばかりだった南アフリカチームは、大統領と国民の期待に応えて奇跡的に試合を勝ち進み、強豪ニュージーランドと決勝戦を闘うことになる。
マンデラは南アフリカチームの主将フランソワを勇気付けるために、ワールドカップ開催の前日に、これまで自分の人生を支えてきたひとつの詩を贈る。
その詩が「インビクタス(負けざる者たち)」。
Out of the night that covers me,
Black as the Pit from pole to pole,
I thank whatever gods may be
For my unconquerable soul.
In the fell clutch of circumstance
I have not winced nor cried aloud.
Under the bludgeonings of chance
My head is bloody, but unbowed.
Beyond this place of wrath and tears
Looms but the Horror of the shade,
And yet the menace of the years
Finds, and shall find, me unafraid.
It matters not how strait the gate,
How charged with punishments the scroll.
I am the master of my fate:
I am the captain of my soul.
そして、フランソワは試合の前にマンデラの人生に思いを馳せる。
寝転ぶのがやっとの狭い独房に30年近く閉じ込められたマンデラ。
石を砕き続ける日々の中でも自分を失わなかったマンデラ。
そして今、白人だけの国でなく、黒人だけの国でもない、「ひとつの南アフリカ」を建国しようと闘っているマンデラ…
この思いがキャプテンを動かし、チームを動かし、そして、国民を動かしていく…
実話に基づいた熱い物語。
4 件のコメント:
僕もスーダンに来る少し前、5人ほどしかいない東京の小さな劇場でこの映画を見ました。Nation Buildingや国民和解に命を懸けたマンデラの大胆な発想と仕掛け、それを実現する卓越したリーダーシップ、更にはその発想とリーダーシップを支える暖かくて強靭な人間性に心を動かされました。
歴史に「もしも」はないと言うけれど、もしオバマが8年前に生まれていて、2001年にブッシュでなくオバマが大統領になっていたら、9.11もアフガン戦争もイラク戦争もなかったかもしれませんね。スーダンでは、ジョン・ギャランと組んで「新しいスーダン」を本気で構築するための協力が始まっていたかもしれない。ハルツームのアラブ独裁政権と、南のディンカやシュルク、北のヌバ、フール、ベジャ他大小全ての民族グループをひっくるめた国民大和解が成立し、それぞれの地域コミュニティや部族のアイデンティティーを尊重しながら、新しい技術やマネジメントも効果的に導入し、すべての人が争わなくても暮らしていける多民族共生の連邦国家が生まれていたかもしれない。2011年7月にはジョン・ギャランが統一スーダンの大統領になっていて、同時にテロ支援国家リストから外され、経済制裁も解除され、債務救済の道が開けていたら、と言うのは夢想家の戯言でしょうか。
でも、南コルドファンやダルフールで、依然として続いていると言われる【人道上の犯罪】のニュースを、日々重苦しい気持ちで読みながら、我々がその場所に直接立ち入って活動することで、この国の歩む道を少しでも変えることが出来るのではないか。中央政府からの施しではなく、地域の住民と自治体との信頼と協働を育みながら社会サービスを向上するような支援を行うことで、この国の中央と周縁との力関係を崩すことができるのではないか、と考えるのは間違ってはいない気がします。ラグビーを使って、黒人と白人が協力し先進国にも劣らない力強い国になる将来像を国民に悟らせたように、地道な努力だけではなく、メタファーを駆使しモデルを分かりやすく示すような工夫や仕掛けも重要なのでしょうね。
私も観た!過剰に感動を作り上げてない、いい映画だったね。他力本願になりがちな今日この頃、しっかり自分の足で歩いていきたいと、ブログを読んでいて思いました。
幸子さん
この映画を見て、物語のような、でも物語よりも素敵な現実があるのだなぁということ、そして、リーダー次第で国やチームは大きく変わることができるのだなぁということに思いを馳せました。
最近ちょっとよれよれ気味ですが、私も自分の足でしっかり歩いていきたいです!
幸子さんのツイッター、いつも楽しみながら読んでいます♪
Moriさん。
ご無沙汰しております。そして、Moriさんからいただいたコメントが、長い間スパムと認識されてブログ上に表れていなかったため(コメントに気づかず)、お返事が遅れてしまいすみませんでした。
おっしゃるように歴史に「もしも」はないのでしょうが、でも、今この瞬間を後から振り返ってみたら、歴史の「もしも」の瞬間であったというようなことはあり得ますよね。南スーダンが独立し、南北スーダン関係の雲行きが怪しくなる中で、うてる手はないか…国連も米国も近隣諸国も一生懸命検討しているのでしょう。私たちも国際協力を通してその一端を担えれば…強く思います。
「メタファー」大切ですよね。今の南スーダンはそれがないため、国民をひとつにまとめることに苦戦しているのではないでしょうか…
今後もぜひMoriさんのスーダンウォッチを共有していただければ幸いです。よろしくお願いします。
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