アメリカのスラム街でアトリエを設置し、陶芸を教えることを通して、貧しい人々自身が持つ可能性に気付かせ、彼らが豊かな人生を送る手助けを始めたビル・ストリックランド。
その後、彼は職業訓練所やコンサートホールの建設・運営を通じて、多くの貧しい人々をエンパワーし、彼らを成功へと導いていく…
そのようなビルのストーリーを綴った『あなたには夢がある』。
貧しい人々について書かれていることは、アメリカのスラム街だけではなく南スーダンのような途上国文脈にも当てはまるため、我々開発援助に携わる者に対するインプリケーションが多々ありました。
どのような人にも可能性がある。
ただし、貧しい人達はそのような可能性があることを自らは信じられないような環境に置かれている。
そのため、その可能性に気づくきっかけを得られるような環境を用意する。
その体験を通じて、貧しい人達は初めて「貧しい人」ではなくなり、自らの可能性を信じ、行動していけるようになる…
アトリエ、職業訓練所等での活動をとおして、これらのサイクルを見事につくり上げて行ったビル。
このような「きっかけ」を人に提供するような仕事をこれまでどれだけやってこれたか…ビルの本を読みつつ、自問自答を繰り返す私がいました。
素敵な言葉がたくさん詰まった宝箱のような本。以下に少しだけ紹介します。
「私たちはだれもが、夢をかなえる力を秘めている。その力が発揮できない最大の要因は、その夢は非現実的だ、手が届かない、と自分で思い込むこと、あるいは人から思い込まされることだ」
「芸術は架け橋です。より大きな世界、さらに幅広い経験ができる世界への架け橋なのです。路上で生活していた貧しい少年たちが、よい絵を見たからといって必ず芸術を愛するようになるとは思いませんが、人は芸術に接することで、変われると思います。(中略)うちの生徒たちは、『自分にはできない』と決めつけるのをやめます。そして、生きがいのある生き方とはどんなものなのか、おぼろげにではありますが、わかりはじめるのです」
「実際、自分自身を救うまでは、他人は救えない。自分を知り、自分がどんな生き方をしたいのかわかるまでは、他人を救うことなどできないのだ。」
「私は、自分の経験から、また成功した生徒たちや尊敬するたくさんの成功者たちを見て、本物の成功を収めるもっとも確実な道は、心や精神にとって大事なものを知性と責任をもって追求することだと確信している。」
「砂時計の砂は、いつも同じように流れる。他人の成功の定義に従って、貴重な時間を無駄にするのはやめてほしい。今の望みにしたがって生きてほしい。あなたを元気にするもの、悩ませるもの、生きているともっとも実感できるものを見つけよう。そしてそうしたものがあなたの将来を形づくると信じよう。そうすればあなたは、心から望んだことを、きっとかなえることができる。」
「失敗への恐怖は夢の妨げとなる。しかし、失敗を恐れていてはとびきりの人生は送れない。その恐怖に打ち勝つには、自分の情熱を信じることだ。情熱は、失敗を防ぐことはできないが、情熱があれば、何度失敗しても夢が消えることはない。人は失敗することで学ぶ。失敗することで、人はビジョンを立て直し、やり方を考え直し、夢の実現に必要なスキルや能力の向上を図る。」
「貧困とは、無秩序な思考だ。貧困とは、人生のもっとも深いところにある可能性とのつながりを失うことだ。マンチェスター・ビッドウェイルでは、生徒がそうしたつながりをふたたび取り戻す手助けをしようとしている。壊れた人生を修復するために、豊かで意味のあることに夢中にさせ、彼らのほんとうの潜在能力に気づかせようとしているのだ。」
「どのセンターにも、私たちのスクールの次のような基本理念を行きわたらせる。『どんな環境に生まれても、人はだれもがすばらしい力を秘めて生まれてくる。生徒を健全な環境に置き、心の栄養となるような刺激的、創造的体験をさせることで、生徒はその秘めた力を開花させる』」
「世の中には、『ほしいもの』がわかっている人はたくさんいる。でもそれをストーリーとは言わない。あなたが『なりたいもの』がわかっていることを人に示せるものがストーリーなのだ。あなたが自信を持って真摯に、そんなストーリーを語れるなら、いずれはそれを聞くのにふさわしい相手をつかまえ、とびきりの時間と本物の成功を手に入れることができるはずだ。」
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