週末に仕事でへとへとになった後、何か気分転換をと思い映画『スラムドッグ$ミリオネア』(原題:Slumdog Millionaire)と本『妹たちへ2』の世界へ。
『スラムドッグ$ミリオネア』は出張で10回以上訪れたことのあるインドの話だと知っていたのでずっと気になっていたものの、機会を逃して見ていなかった。今回この映画を最後まで見て「あぁ、これはラブストーリーだったのか」とやっと気付いた私だったのであまり偉そうなことは言えないけれど、ストーリーそのものよりもその途中途中で現れるインドの様々な顔の方が印象的だった。
ムンバイに昔出張に行ったときのこと。車で移動している最中に信号で止まった時、窓の外を見てギョッとした。若い女性が抱えている赤ちゃんの肌がぼろぼろで、ハムみたいに紐で縛られて焼かれたような痕がある。これは赤ちゃんを惨めに見せてより多くのお金を集めるために人為的にやったものだなとすぐに分かって、反射的にその若い女性をにらんでしまった。でも、映画の中にも出てくるように、そもそもそういうことを若い女性にやらせている「ボス」が裏にはいたのかもしれない。その女性だって被害者だったのかもしれない。自分のした行動は浅はかだったなと今さらながらに思う。
華々しいTVショーとその裏でつながりのある腐った警察、IT産業を筆頭に発展し続けるインドとその裏で拡大し続けるスラムと闇社会、時々突発的に起こるイスラム教とヒンドゥー教の対立…インドの光と影のどちらかだけを強調するのではなく、ありのままが描かれていた。内容的には決して明るいとは言えないものだったが、一方で、映画全体を通してリズミカルな音楽が流れ、やっぱり最後には主人公とヒロインが踊りだしてインドらしさ炸裂!という感じで終わったため、暗すぎるという印象もなかった。不思議な後味の映画。
他の日本人が置いていった本。たまたまめぐりあったので読んだというだけだったけれど、私たちよりずっとずっと先輩で輝き続けている女性たちの20代・30代の頃の話が飾り気なく紹介されていて、読み進めるうちになんだか肩の力が抜けていくような気がした。特に女優の夏木マリさんと東大教授の上野千鶴子さんの話が素敵だった。
夏木マリさんは今では「個性派女優」として知られているけれど、20代のころは「君は地味で個性がない。小学校の先生みたいだね」と言われたんだとか。そして、8年間地方のキャバレーで歌い続け、今日も嫌だと思ううちに朝がきて、明日がいやだと思って夜眠るような日々を送っていたというから驚きだ。
また、女性学の権威である上野千鶴子さんは、30歳でやっと職を得た短大で、女性学の総合講座をつくろうと教授会に提案したとき、古手の教員から「それって学問ですか」と横やりが入って、人前でめったに泣かない人が悔し涙にくれたと言う。上野さんの授業は私も学生時代に受けたことがある。当時生意気だった私はいろんな質問を先生に投げかけたけれど、その時の上野さんの印象からはとてもとても教授会で泣くなんて想像できず…
今輝いているように見える先輩女性にもいろんな過去があったのだなぁということが分かり、まだまだかっこ悪くてもどこに向かっているかよくわからなくてもいっか…というような前向きな(?)気持ちになれた。業界が違う女性がたくさん紹介されていたのも新鮮だったな。
「先生ねえ、わたしのやりたいことを指導してくれそうな教授が見つからないんですよ」とこぼしたわたしに、木下センセイはこう言い放ったのだ。「バカモン、世の中に自分のやりたいことを指導してくれるような教師などいると思うな。もしいたとしたら、その研究はすでにやるねうちのないものと思え」爾来、このせりふはわたしの座右の銘となった。
『妹たちへ2』 上野千鶴子より
当時はひどくアンバランスな人生を送っていました。何せ仕事一直線ですから、プライベートの楽しみなんて何一つない。(中略)友人も減っていく。だからもし当時の自分に何か言葉をかけるとするなら、友人は大事にしたほうがいいよと言ってやりたい。人はひとりでは、やりたいことの半分もできないですからね。
0 件のコメント:
コメントを投稿