2014年3月9日日曜日

「最高の授業」を世界の果てまで届けよう

私の働く組織の日本人の集まり(ハッピーアワー)で初めて会った税所くん。

こちらを見てニコニコニコニコしていたので、「どこかで会ったことがある子かな?でも見覚えないけどな・・・」と思っていたら、そのうち声をかけられて「旦那さんのところにしばらく泊まらせてもらってました。そのときに、えりさんの写真をいくつもみていたため顔を覚えてました!」と言われ、あーそういえば暫く学生の子が泊まってたと旦那が話していたなぁ、この子だったんだぁ・・・と納得。

そのときにうちにといただいた本がこちら。
「『最高の授業』を世界の果てまで届けよう」

来週に南スーダンの政府の人たちをナイロビに招いて、(昨年末の紛争勃発以降の状況を踏まえて)事業のレビューを行うので、南スーダンについて思いをはせる日々。

アフリカの優等生ケニア、ウガンダやタンザニアでも学校の教育の質は問題だと聞くので、南スーダンのような紛争影響地域ではなおさら。私も以前南スーダンに駐在し教育事業を担当していたため、学校の様子についてはある程度の現場感覚はある。教育省には、たくさんの専門家やドナー関係者が世界中からかけつけて協力を持ちかけていたけれど、現場の吸収能力にももちろん限界があるため、かなり混乱した様子だった。そして、女子教育についてはもっと悲惨。小学校を卒業するよりも、妊娠して亡くなる可能性のほうが高いのだから・・・

そんな中、ケニアやウガンダで提供されている学校の授業をビデオで録画する形で南スーダンの子供たちに届けるほうが(学校の先生を再教育して授業の質を向上させていくよりも)近道でかるインパクトも期待できるのではいか・・・ケニアやウガンダなどで教育を受けて現在省庁で活躍している南スーダンの人たちを私はたくさん知っているし・・・とぼーっと妄想していた。

そんなときに税所くんの本を思い出して手に取る。

一気に読んで心が揺さぶられた。

彼の行動力と(周りをつぎつぎと巻き込む)共感させる力に。

彼が窮地に陥ったときに暖かい声をかけてくれる周りの人たちもまたすばらしい。

途上国に必ず存在するカリスマ講師の授業をDVDに納め、それを途上国の農村に住む子供たちに届ける―この活動が子供たちの未来を切り開いていく・・・

私が週末にアメリカの自宅でぼーっと妄想していたことを何年も前から現場で(それも世界五大陸で)実現している青年がいたのだ。

もちろん、いい大学を出たとしても就職口がないという途上国の若者の話をよく聞く(スリランカや南インド、中国など)。なので、途上国の「果て」に住む子供たちに最高の授業を届け、彼らの大学進学率を伸ばしていくことだけで途上国の教育問題が解決するわけではない。また、事業の収益性が未だ確保できていない中で、どう事業を拡大展開・深化させていくのか、この点に課題があることについては税所くんも著書の中で言及していた。

でも、何事もやってみないと次にはつながらないし、数年でここまで事業が展開できたのであれば、その先に待ち受けている様々なチャレンジについてもいろんな人たちを巻き込みながら、うまく解決していけるのではいか・・・という気持ちになる。

彼の著書を通じて、彼の冒険を追体験させてもらっているような気がして楽しかった。

私が一生関わりたいと思っている紛争影響地域は、治安の関係から他の地域から物理的に遮断されていることが多い。また、多くのいい人材が現地を去り、そして、外の優秀な専門家も現地を訪れたがらない。他の地域であれば「当たり前」にできることが、紛争影響地域だからという理由であきらめなければいけないことがあまりにも多すぎる。

そのため、税所くんのこの事業はこういう地域でこそ必要とされているのではないかーそう強く感じた。

フィリピンのミンダナオでもこの事業を展開する予定だという。そこでの経験・ノウハウをスーダンや南スーダンに持っていくことはできないか・・・私の週末の妄想は続く。



「自ら戦略を持つのではなくて、現地の人に任せるなんて、君は新しいタイプの経営者だ。皮肉ではなく、それはおもしろいと思う。経営はやりたいようにやらなきゃダメだからね。一方で、『試しにいろいろやってみる』というのは、失敗する経営者の常だ。いまから5つ、僕からアドバイスをさせてほしい。メモしなさい。マヒン君、君もね。
1.生と映像とでは迫力が違う。圧倒的なコンテンツをつくり続けなさい。そしてちゃんとメンテナンスを続けなさい
2.日本ブランドを作りなさい。日本の国旗を入れるのもいい。
3.プロモーションやデモンストレーションは、コンテンツの『はじめの1』をお客さんに観てもらうためにやりなさい。残りの『99』のためではなく。とにかく、『1』を見てもらうことに全精力を傾けなさい。
4.マヒン君のようなコーディネーターを育てなさい。これはこの事業の肝だ。
5.この2年間で、事業としての実績を作りなさい。これ大企業の戦い方ではない、ベンチャーの戦い方だ。まず2年間の計画を立てなさい、今までのは白紙にして、すべてを。3ヶ月に一回の会議と、毎月の収支報告をしなさい。」(ワタミ渡邉会長から税所くんへのメッセージの抜粋)

「(税所くん発言)先生、実は僕の中途半端な取り組みのせいで、ワタミからパートナーシップを打ち切られることになりました・・・」(中略)「(先生)は、は、は!そりゃよかったじゃないか。(中略)アツヨシ。いいか、お前な、世界を変えるなんてのは一生の仕事なんだぞ。お前はスタンドプレーが好きだが、いつもそれでやっていけると思うのがまちがいだ、バカもの。これでまた一からのスタートだ。出直せ」(米倉誠一郎一橋教授から税所くんへのメッセージ)

「足立区長?就職?ぜんぜんおもしろくない。いまの年齢でここまでやれたんだろ?考えてごらんよ。この道であと10年も続ければ、もう誰も勝てなくなる。(中略)税所くんが世界のあちこちで破壊すればするほど、日本の同世代に創造的な影響力を与えられる。もっと道を外れていい。生きるか死ぬかを体験してこいよ。他人からどう見られているかなんて、気にしたってしょうがない。もっと自由に生きてみろ。(中略)人生は逆張りで行く。それがポイントだ。そのほうが断然かっこいいし、第一な、モテる。いま、君はいい感じで逆に張っている。この逆張りをさらに突き進めていい。マイクロソフトやグーグルの創業者が、途上国の支援を積極的に手がけているのは知っているよな?彼らがそうした活動を始めたのは、商売で成功した後の話だ。だが君はもっと上だ。いまの身分ですでにアクションを起こし、しかもちゃんと結果を残しているんだから、自信を持っていい。(中略)それにな、大学を出て普通の会社に就職しても、そこで得られるものはほとんどないぞ。一度、外で蓄えてこい。まずは子どもたちのためだけに集中して、その先になにがあるかを探すんだ。わけのわからない体当たりをして、日本人の限界を超えてみろ。20年それを続けたら、君の勝ちだよ。(中略)最後は、世界が君に追いついてくるさ」(藤原和博先生から税所くんへのメッセージの抜粋)

「もしわたしが税所くんの今の立場だったら、こんな風に考えたと思います。アメリカで開催されているコンペなので、アメリカ英語でやるのは当然だが、なぜ日本語じゃだけなんだろう。いっそのこと、日本語でしゃべてしまおうか。それでもまったく構わないかもしれないけれど、一応礼儀としてすこしだけ英語を使ってやろう。それも、アメリカ英語なんか使ってたまるか、日本英語でやろう、なにせ自分の日本英語は、バングラや中東やアフリカでは通用したわけだから。そのほうが、明確にアメリカ人のグループとは差別化できるだろうなぁ。よし、その方針で行こう、それなら自分にできるかもしれない。そのためには、流暢に、たくさん説明するのはやめよう。それより、すくなく、ゆっくりとした説明を、自信をもって、熱をこめて参加者に訴えかけよう。参加者がもし心ある聴衆であれば、自分がたどたどしく日本英語で説明することを、しっかり聞いてくれようとするだろう、それがアメリカだと思うから。」(友成真一早稲田大学先生からアメリカでのプレゼンを控えた税所くんへのメッセージ)

「生きている限り、パンツ一枚分だけ黒字であれば、それでいい。(中略)非常識だと思われていることをやることに異議がある(中略)無我夢中でやっているうちに、気づけばステージが上がっている。だから君は今の活動を一生懸命進めていくんだー」(中古車販売最大手ガリバーインターナショナルの羽鳥兼一会長から税所くんへのメッセージ)

「僕とマヒンは、ダッカのストリートチルドレンがら購入した同じ地図を持っています。5大陸のたびをスタートするときに、僕たちはその地図にこう刻みました。
The end of life is not knowledge but action.」(第七章より抜粋)

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