2010年2月20日土曜日

ジュバからは見えない風景

南部スーダンの援助業界で今年話題のペーパー’Rescuing the Peace in Southern Sudan’


OxfamSave the Childrenなどの10の国際NGOが連名で作成したものですが、我々ジュバベースの援助機関には把握することができない南部スーダンの地方の生の声、また、国連を含む国際社会への厳しい批判を含む内容となっています。


・南部スーダン政府による武装解除の実施、そして、UNMIS(国連スーダンミッション)による国連平和維持軍の派遣にも関わらず、2009年には南部スーダンでは2,500人の人々が殺され(その犠牲者のほとんどは女性と子供)、35万人の人々が家を追われた。

・南部スーダン全域において舗装された道路は合計で50km以下しかなく、そのほとんどがジュバに集中していることから、雨期には南部スーダンの地方には食糧を含む援助ができない状況が生じている。

・フランスのサイズの国土を持つ南部スーダンでは、未だに50%以上の人々が安全な水へのアクセスを持たず、他のどの国よりも妊婦の死亡率が高く、7人中1人の割合で子供は5歳になる前に死亡し、90%に近い人口が読み書きができない状況…

Multi Donor Trust Fund(MDTF)に代表される南部スーダンの援助の枠組みは、プロジェクトに資金が出されるまでに多くの時間がかかることから、現地の差し迫った開発ニーズに応えることができていない(2005年から始まったMDTFに拠出された524億円のうち、実際に使われたお金は1/3程度)。また、南部スーダンの未来が不透明な中で、ドナーは長期的な資金を出そうとしないことから、南部スーダン政府やNGOは長期的な開発計画を立てることができない。

・政府をつくるという経験が皆無に近い南部スーダン政府に対して、必要な技術支援が十分になされていない(同じように紛争後の国づくりに直面した1990年のモザンビークでは、3,000人に近いTechnical Assistance (TA)が省庁に配置されていたが、南部スーダンでは150人程度)

・現在の南部スーダンでは、民間人の保護、人道援助(緊急援助)への対応と備え、そして、南部スーダン政府への技術支援を含む開発援助の実施促進が何よりも重要。


それにしても、名立たる国際NGOAdvocacy力には驚かされます。

国際機関やドナー国から委託される業務をただ単に実施するということだけに留まらず、現地の人々の声を(途上国政府を通さずに)直接国際社会に発信するという役割を積極的に担おうとする国際NGO

このペーパーによって、UNMISは国際NGOと協議する場を持つことにしたとか…


「南北の和平合意が成立してから5年が経過し、レファレンダム(南部の独立を問う住民投票)まで1年を切った今、これからの12か月をどう乗り切るかによって、スーダンの未来が大きく変わるだろう…」


ドナーを含む国際社会は、このペーパーのメッセージを真剣に受け止めなければなりません。

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