紛争後の国づくりで、最も必要とされる支援は何でしょうか。
病院や学校へのアクセスを確保する道路等のインフラ建設か
国の未来を担う人材づくりとしての教育支援か
妊婦や乳幼児の死亡率を低下させるためのプライマリーヘルスサービスの提供か…
その国の現状をどの角度から見るかによって、必要と思われる支援も異なってくるでしょうが、一つの候補としては「職業訓練」が挙げられると思います。
日本だと「職業訓練」と言ってもなかなか具体的なイメージが湧きにくいのですが、高等教育機関がほとんど存在しないような紛争後の国では、人々が普通の暮らしを送ることができるようになるために、「手に職をつける」(訓練を受ける)ことが求められます。
職業訓練を受けて職を得ることによって経済活動に参加できるようになり、衣食住が満たされ、子供を学校に送ることができるようになり、人々は誇りを取り戻し、未来に希望が持てるようになる…
この「未来に希望が持てるようになる」という感覚は実はとても重要です。
未来に希望が持てず、紛争中と何ら生活が変わらないとすれば、人々は紛争に後戻りしても仕方がないと思うかもしれません。また、紛争に再度訴えることによって、現状を変えようと思う人も出てくるでしょう。
一方、未来に希望が持てるようになれば、つまり「平和の配当」を感じることができれば、人々は平和な状態の継続を強く望むようになるでしょう。
このような民意こそ重要で、この民意をつくり出すためにも、「職業訓練」が果たすことのできる役割は決して小さくないと言えます。
2005年の南北スーダンの包括的和平合意の後、2006年9月から3年半の間、うちの組織は南部スーダンのジュバの職業訓練センターの運営支援及び職業訓練を提供するNGOの能力強化を実施し、このプロジェクトを通じて、3,861人の南部スーダン人が職業訓練の機会を得ることができました(62人の元兵士も含む)。
そして、このプロジェクトのフェーズ2が今月末から開始されます。
フェーズ2では南部スーダンの地方へも支援を拡大していく予定です。
もちろん、前回のプロジェクトからの課題も残されていますが、一人でも多くの南部スーダンの人々に職業訓練の機会を提供できるように、現場での挑戦は続きます。
私も教育・農村開発に加えて、職業訓練(本事業)の担当になりました。
南部スーダン政府、国営の職業訓練所、ローカルNGO、国際機関等、さまざまな関係者がパートナーとして存在するこの事業では、それぞれの組織の強みを生かしながら役割分担を行い、目に見える成果を出していくことが求められています。
プロジェクトの開始が今からとても楽しみです。
◎南部スーダンの地方にある国営の職業訓練所の風景(奥の方に『家具』のモデルが展示されている木工コースのワークショップ)