7月の半ばにAU(African Union)サミットを前にして、26のNGOが合同で’Renewing The Pledge: Re-Engaging the Guarantors to the Sudanese Comprehensive Peace Agreement’(和訳:誓いを新たに-スーダンの包括的和平合意の立役者たちは再び関与を-)というレポートを発表しました。
アフリカの首脳陣にスーダンの包括的和平合意履行への関与を求めるのが主な目的のレポートだったようですが、住民投票まで半年を切って時間がない中で、スーダンに対してどのようなアクションが今必要とされているかが簡潔にまとめられています。
2010年1月9日に予定されている南部スーダンの独立を問うための住民投票を前に、南北スーダン間の駆け引きは段々活発化しています。
南北スーダンの国境線が画定しなければ住民投票は実施できないという声が北部スーダンから聞こえてきたり、一方的に独立を宣言する選択肢もなくはないという声が南部スーダンから聞こえてきたり…
政治は妥協の産物だとは思いますが、特定の集団に大きな不満を残さない形で物事を進めなければ、必ず後でしっぺ返しがきます。
北部スーダンの人々の中には、戦争ばっかりやっていた南部スーダン人が油田とともにスーダンから独立するなんて許されるわけがない…と思っている人たちが少なからずいます。また、北部スーダンに不利な包括的和平合意が2005年に締結されたのは、かなりの圧力がアメリカからかけられたからだと言われていますが、北部スーダンは譲歩して包括的和平合意を締結したものの、ICCから大統領に対して逮捕状は出され、南部にばかり国際社会の援助が入り、アメリカは引き続き経済制裁を解除せず…譲歩した意味は果たしてあったのか?という議論が北部スーダン内部でなされているはずです。
南部スーダンの人々の中には、たとえ戦争になったとしても独立以外の選択肢はないと考える人たちが少なからずいます。また、2005年の包括的和平合意以降北部スーダンは南部スーダンに対して何をしてくれたのか、結局「一つのスーダンを魅力的な選択肢にする」という約束は口だけだったじゃないか…という不満が南部スーダンの中ではくすぶっています。一方で、南部スーダン内部にも数多くの部族が存在しますので、南部スーダン内部の意見も一枚岩ではありません。
このような中でどこを着地点として目指しながら南北間の協議を進めていくのか…
そして、国際社会も南北スーダン関係者に、「戦争」よりも「平和」の方がメリットが大きいのだということをどのようにして認識してもらうのか…
南北スーダンの指導者たち、そして、国際社会は今難しい舵取りを求められています。
「ふだん雑談のときの話題なら、奇抜さを争い、風変りをきそって、その場かぎりの笑い草とするのももちろん結構だが、いやしくも国家百年の大計を論ずるようなばあいには、奇抜を看板にし、新しさを売物にして痛快がるというようなことが、どうしてできましょうか。」
『三酔人経綸問答』中江兆民より
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