マラウィで青年海外協力隊として小児科で医療活動を行った後に、ラオスでポリオ撲滅のためのプログラムに関わった医師黒岩先生が書かれた本を読みました。
1日に100人近い子供たちが死んでいくマラウィの病院で医療活動を行いながら感じたこと・考えたことが綴られており、南部スーダンの医療現場もこのようなところなのだろうか…と思いを巡らせました。
マラウィでは患者と一対一で向き合いながら医療活動を行った黒岩先生でしたが、ラオスでは「ポリオ撲滅」のために調査や予防・啓発活動に携わっていくにつれて、ご自身が政治化されていくのに気づきます。そして、国際協力という美名に隠れて、金儲けに奔走する企業、国益を追求する先進国、富を独占する途上国の権力者層の存在を知ることになります…一方で、何百人の子供の死に立ち会いながらも一人一人の子供の命の尊さを忘れない看護婦さん、中国の農村を地道に渡り歩くことによってポリオに係る統計のトリックを見抜いた医師、貧しい民族出身の子供を自腹で救おうとする看護婦さんとの出会いもあります…国際協力の光と影が実に正直に書かれていました。
「ラオスで会ったオーストラリア人の環境専門家はいった。『私は環境アセスメントの光と影をあなたにささやいた。あなたも私に素朴な疑問を質問した者として、心に浮かぶ疑問について声を出す義務がありますよ。』」
この言葉がきっかけで、黒岩先生はこの本を書き、心に浮かぶ疑問について黒岩先生なりの形で声を出されました。
「援助慣れ」しているのは何も途上国の人々だけではないですよね。自戒の念を込めて…
「確かに僕は子どもの死に麻痺するようになっていた。しかし人の心というものはわからないものだ。知り尽くしたと思っている自分の心が、時には予想もしない反応を起こすことがある。」
『小児科医、海を渡る』黒岩宙司より
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