2010年5月24日月曜日

今そこにある危機

ジュバから車で1時間ぐらいの郊外に行くと、使われていない学校や保健所などの施設をたくさん目にします。


復興支援の一環として国際機関やNGOによって建設された施設で、プロジェクト期間が終わった後は南部スーダン政府に施設を譲り渡し南部スーダン政府がそれを管理・運営していくという約束のようなのですが、その施設をまわしていくだけの資金とシステムが南部スーダン政府にはないので、結局その施設やその中の資機材が使われないまま朽ち果てていっています…


この話だけを聞くと、まだ援助機関はそんなことをやっているのかという批判を受けるでしょう。

でも…現場にいるとその援助機関のロジックも分かります。


例えば保健セクター…


1000人中250人の子どもが亡くなってしまい、妊産婦の死亡率が世界で最も高いと言われている南部スーダンで、保健所や病院を通じた医療サービスを現地の人々に提供しなければならないというのは誰の目にも明らか。

そのため、このような事業には国際社会からもお金がつきやすい。

さらに、現地の人も病院へのアクセスが最優先課題だと訴える…

これらの3つの要素が重なって、内戦直後に農村部では保健所などの施設が建設され、NGOによってその施設がしばらくの間運営される…

でも、プロジェクトの期間には限りがあるので、その期間が終了した後には、政府に運営資金とスタッフを提供することを紙面上で約束させて、その施設を譲り渡す…

しかし、そもそも保健所のような政府の末端の施設にまで運営資金が適切に流れていくような仕組みや人事制度が整っていない政府は、結局そのような施設をもてあましてしまい、頑丈な鍵をかけて管理という名のもとに放置してしまう…


「緊急援助」から「開発援助」への切れ目ない移行が必要だと言われて久しいですが、現場ではなかなかそれがスムーズに行かず、試行錯誤は続きます。


「今そこにある危機」に対応しつつ、長期的に持続可能な制度づくりをどのように行っていくか…


国際協力とは地味で粘り強い試みの積み重ねなのだなぁと実感しています。


◎使われずに山積みになた薬と保健所

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