Jua Kali。
スワヒリ語で「熱い太陽」という意味。
もともとは灼熱の太陽の下で陶器をつくる人を指す言葉だったようですが、今ではインフォーマル・セクター(※)で働く職人全般のことを指す言葉になったようです。
(※)インフォーマルセクターとは、正式な企業登録を行っておらず、政府の保護も規制も受けない零細企業や個人が活動する経済部門のこと。ケニアでは労働人口の80%はこのインフォーマルセクターに属し、新規雇用の90%はインフォーマルセクターから創出されるという数字があります。
最近、世界のごく一部の消費者(先進国の裕福な人たち)のニーズを満たすためのデザインだけではなく、世界中に存在する貧しい人たちのニーズを満たすためのデザインはどうあるべきか、という議論が日本を含む世界各地で盛り上がりを見せていますが、この『Making Do』の著者の問題関心も、先進国の技術やデザインが途上国の貧困削減に貢献するためにはどうしたらいいのかというところから始まっています。
我々は‘通常’途上国の経済成長のためには、外国からの援助や直接投資(そして直接投資を呼び込むための経済特区)が必要だという議論をしがちですが、この本はそのような議論からは一線を置きます(そもそも経済特区については、労働人口の90%の人たちへの技術移転が産まれず、またその結果、社会の不平等が助長されるということを著者は指摘しています)。
著者は、ケニアの労働人口の大半を占めるこのJua Kaliに光を当てて、そこで働くJua Kaliの経済活動(商品のデザイン、生産、販売等)を包括的にレビューし、そして、ネットワークや創造性等の彼らの持つ資源と、金融機関へのアクセスがないことや専門家からのアドバイスがないこと等の彼らが直面している障壁の両方を明らかにし、その障壁を取り除くためには外部からどのようなインプットが必要かということについて提言を行っています。
既存のインフォーマルセクターに着目して、そのセクターがどのように機能しているかを綿密に調べることで、必要なインプットを考える―当然のプロセスのように聞こえますが、この当然のことを外部からの介入を行う前に行った人/機関はどれだけいるか―彼の著書が注目されていること自体、これまでこのような調査が十分になされてこなかったということを物語っています。
現地の実情やニーズを適切に捉えないまま外からの介入(援助含む)を行うことは、現地のある一定の合理性の下に成り立っている既存のシステムに歪みを与えることになるため、十分な注意が必要です。一方、現地のニーズを適切に踏まえたインプットを行うことができれば、小さな投入でも大きな効果を生む可能性があります。
著者は、現地のJua Kaliを支援するプラットフォームをWeb上で構築し、Jua Kaliが考案した技術をWebに掲載して、専門家のアドバイスを受けたり、初期投資に必要なお金を集めたりすることが可能だと書いていますが、これはBoPラボ( http://boplabjp.ning.com/ )で日本人のメンバーの方々が今まさに行おうとしていることだと言えます。
この著書の題名『Making Do』のいい訳が思いつかないのですが、もともとは「間に合わせる、やりくりする、対処する」といった言葉。廃材から様々な商品を作り上げていくJua Kaliの創造性をこの言葉で表現したのでしょうか。
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